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じゃりン子チエで真っ先に思い出すグルメといえばホルモン焼。
現在「ホルモン焼」といえば焼き肉屋などで食べる臓物料理のことを意味しますが「チエちゃん」で出されるホルモンは焼肉屋のそれとは異質の物です。
これについては、すでに当会著『じゃりン子チエの秘密』(データハウス刊)で解説されているため、詳しい説明を省きますが「ホルモン料理」そのものは大阪で発祥した料理なのです。
昭和初期、大阪の洋食店「北極星」のシェフ北橋茂男氏は、使い道がなく捨てられていた臓物で料理を作る研究をおこなっていました。その結果、煮込み料理やグラタンなどの調理法を編み出し、店に出したところ、大好評を博したそうです。
そして「北極星」は1940年、一連の料理を「ホルモン」と名付け商標登録。この「ホルモン」の名前は体内に活力を与える物質「ホルモン」に由来したもので、大阪弁の「放る物(捨てる物)」から転じたという説は俗説とされています。
それから、まもなくして日本は太平洋戦争に突入、そして敗戦を迎え、人びとは貧しい生活を強いられることになります。ここで再び脚光を浴びたのがホルモン料理でした。ただし、この時代のホルモン料理といえば北極星が編み出したような手の込んだ洋食ではなく、ただ単に臓物を味付けして焼くだけものでした。
しかし、どんなときでも大阪人の商才はたくましいもの。戦後まもなく、この「ホルモン焼」を商売にする店が次々と開店していきました。おそらくおバァはんの店も、このころに開店したと考えられます。その一方で、ホルモンを商標登録している北極星では、この単純な料理を「ホルモン」と名付けて売ることについては黙認していました。
最近は、串焼きのホルモンを見かけなくなったとはいえ、西萩地区のモデルとなった西成区や新世界界隈の立ち飲み屋などに行けば、庶民の味としてしっかりと息づいています。
大阪で食べられる串焼きの「ホルモン」は豚の腸を使っている場合が多く、牛の臓物の串焼きの場合は「スタミナ焼」と名付けられていることが多いようです。
豚の臓物は一般的に入手しにくくなっているので、もし自宅でホルモン焼きを再現するとすれば、牛臓物を使うとよいでしょう。
しかし『じゃりン子チエ』では堅気屋のお好み焼レシピ(9巻5話)が発表されているものの、もっとも原作に登場した料理である「ホルモン焼」のレシピについては全く発表されていません。
チエちゃんのホルモンを再現するにあたり、1998年に当サイトの掲示板に相次いで書き込まれたホルモン焼情報をベースに、筆者の独自取材(ただ食べただけという説もある)をエッセンスとして加え、ホルモン焼を再現してみました。
●材料(2人分)
- 豚または牛の腸(俗に「テッチャン」と呼ばれる部位)。酒のつまみやおかずであれば、100g程度で十分。
- 酒、みりん、醤油、蜂蜜、固形鶏ガラスープ、好みに応じて唐辛子、辛口の焼き肉のタレ
●(A)タレの調合(2人分)
- 鍋に清酒、みりんを各20ccを入れて煮きる。
- 醤油100cc、鶏がらスープの素小さじ半分、蜂蜜小さじ3杯を加えて10分ほど煮込む。肉が味付け肉でない場合は小さな唐辛子を2、3個加えて煮込むとよい。
- 10分程度煮込めば火を止める。隠し味として焼き肉のタレを大さじ1杯ほど加え、よくかき混ぜた後、一晩置く。
- このタレをこし器でこす。これでタレは完成。
●(B)肉の処理
- 肉の臭味を取るために、1時間ほど中火で煮込む(すでに肉が味付けがされている場合も同じ)。
- 煮込んだ肉を串刺しにして、タレに1昼夜、漬けこむ。
- 魚焼きの網があれば、マンガでチエちゃんが焼くようにして焼く。火は弱めにしてじっくり焼くほうがよい。
このレシピを作るにあたりタレの材料には家庭の冷蔵庫に眠っているものを選定しました。清酒がない場合はワインの残りを使ってみるのもいいかも知れません。
難しいのは、ヒラメちゃんも失敗した「焼き加減」(28巻8話)。コンロの火力により具体的な時間は書けませんが、いきなり強火で焼くよりは、中火でじっくりと焼き、表面に焦げ目が見えてきた頃合いが、ちょうどいい焼き加減です。
串に刺すかどうかは、それぞれの判断にお任せしますが、あえて、串に刺さずフライパンやホットプレートで焼いてみるのもいいでしょう。
(調理:斎藤智美)
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