だるま屋の謎

柴田 保

【目次】

テツがよく行く食べ物屋

じゃりン子チエを読んでいると、テツのよく行く食べ物屋としてお好み焼き屋、ラーメン屋、うどん屋などが登場する。お好み焼き屋(堅気屋)とラーメン屋(カルメラ亭)はテツの友達であるが、その他にテツの友達の店ではないが、テツがチエや花井先生の息子・渉を誘ってよく行くうどんや屋がある。ちなみにテツの好物はてんぷらうどんと天丼である。

いつも行くうどん屋の名前は?

じゃりン子チエで初めてうどん屋が登場したのは単行本4巻の5話で、テツがチエの店にぎょうさん客を連れて行ったお礼としてチエにうどんをおごらせている。そのうどん屋は松ちゃんというメガネをかけたおばはんの店である。そこでミツルの婚約者であるノブ子と相席になり一緒に鍋焼きうどんを食べている。その時、テツはまだその女性がミツルの婚約者であることは知らない。

次にうどん屋が登場したのは単行本5巻の2話で、テツがチエの通知簿を見て「がんばろうばっかりやないか」と言ってチエにうどんをおごらせている場面である。そして、単行本6巻の7話で、東京に出張する花井先生のお供をさせられたテツが、難波で逃げて花井先生の家に隠れていた時に、電話でうどんの出前を頼んでいる場面があり、その時初めてだるま屋という名前が登場する。その後、単行本7巻の5話で、テツは渉を誘いだるま屋に行っているし、単行本10巻の8話でも、おばあはんにケンカで勝ったテツが、花井先生の家に隠れていた時にもだるま屋に天丼の出前を頼んでいる。

私はじゃりン子チエを読んでいて、ふと疑問に思ったのである。テツがよく行く松ちゃんの店は何と言う名前なんだろう?そして、出前などで何度か名前が出てきただるま屋という店はいったい何処なんだろう?ひょっとして松ちゃんの店の名前がだるま屋なんだろうか?

謎のうどん屋

私は今までテツがうどんか丼を食べにいっている店は、漠然とだるま屋だと思っていた。それは、最初の頃にだるま屋という名前が何度か出てきた為に、先入観を持ってしまったのだろう。しかし、単行本にうどん屋が登場する場面を詳しく調べてみると、テツがはっきりとだるま屋とわかる店に行ったのは単行本7巻の5話の1回で、出前が単行本6巻の7話と10巻の8話の2回だけである。

テツがうどん屋に行く場面で、だるま屋と書かれた看板やのれんのある店に入って行く場面は一回も登場しない。のれんにはいつも“うどん”と書かれているだけだ。また、うどん屋で松ちゃんが度々登場するので、松ちゃんの店がだるま屋であると思いがちだが、松ちゃんの店がだるま屋であると証明できる場面も一つもないのだ。

単行本14巻の7話の題名が書かれたページの背景で、一度だけうどん屋の看板が登場しているが、“たじ○屋”となっており、○の部分はセリフの吹きだしで隠れている。

この吹き出しの部分だが、ほんの少し見える部分から推測するとひらがなの“ま”のようだ。この店の名前はおそらく“たじま屋”だろう。

もしかしてここが松ちゃんの店なんだろうか?この店でテツは元応援団長とうどんを食べているが、そこに松ちゃんの姿は登場しないので、ここが松ちゃんの店かどうかわからない。ひょっとすると、ここはだるま屋、松ちゃんの店に次ぐ第三のうどん屋か?

逆に松ちゃんの店がだるま屋ではないと思われる場面がある。それはテツが単行本4巻の5話で松ちゃんの店に行った時、テツは何を食べようか迷っている。そして、他の客が何を食べているのか見て回っている。また、相席のノブ子に対して「ここの天丼はやめたほうがええど、エビなんか入ってないんやから」っと言って鍋焼きうどんを進めている。一方、単行本10巻の8話でテツは渉に「嫁はんもらう前はメシはおもてで一人で食うてたんじゃ」と言っている場面があり、そこでテツは「その中でもだるま屋の天丼が一番や」と言っている。このことからして、松ちゃんの店がだるま屋だとしたら、テツは迷わず天丼を頼むのではないだろうか。何を食べようかなんて迷ったり、ノブ子に天丼はやめたほうがええと言うのもおかしい。単行本4巻の5話の時点では、だるま屋の天丼はうまくなかったのか?それ以降にだるま屋の天丼がうまくなったんだろうか?しかし、テツが嫁はんをもらう前からだるま屋の天丼がうまいということなので、単行本4巻の5話の時点で天丼がうまくないはずがない。すると、松ちゃんの店はだるま屋ではないんだろうか?

松ちゃんの店がだるま屋ではないとしたら、いったいだるま屋という店は何処なのだろう?店の主人はいったいどんな人なのだろう?

結局、単行本を詳しく調べても、だるま屋といううどん屋が何処にあるのか、そして主人は誰なのかというのは謎のままである。

テツは二つのうどん屋を使い分けている?

テツは最初に松ちゃんの店で天丼はやめたほうがええと言っていたが、それは天ぷらがころもばっかりでエビが入っていないからであって、決して丼自体がまずい訳ではないと思われる。その証拠にテツは松ちゃんの店で天丼をよく食べているのだ。

単行本33巻の11話では、テツがおばあはんと一緒に松ちゃんの店で上天丼を食べている場面がある。そして、上天丼は単行本33巻の11話で初めて登場しているし、もう少し前からあったとしても、じゃりン子チエで初めてうどん屋が登場した単行本4巻の5話の時点では、まだ松ちゃんの店のメニューに無かったのではないだろうか。

そう考えると、テツが嫁はんをもらう前や、初めてうどん屋が登場した単行本4巻の5話の時点では、たしかにだるま屋の天丼が一番だったが、その後、松ちゃんの店のメニューにちゃんとしたエビが入った上天丼が加わった為、テツは松ちゃんの店によく行くようになったのかも知れない。

例えば、松ちゃんの店は松ちゃん一人で切り盛りしている為に、出前はやっていないとすれば、テツは出前の時はだるま屋で店で食べる時は松ちゃんの店、という具合に二つのうどん屋をうまく使い分けていると思われる。



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LastUpdate 2003/4/1
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