楽天ブックス
■「チエちゃん」の収入 執筆:あづまひろと
★売上から迫るチエちゃんの収入
 竹本家の生活事情という論文でチエちゃんちの経済状態の考察がありましたが、実際の所チエちゃんはどのくらいの稼ぎがあって、どれだけへそくりを貯めこんでいるのでしょう。もしかすると、ヨシ江さんが家出をしていたときは本当に「生きるか死ぬかの生活」だったのではないでしょうか。
 ということで、とりあえず本文中で実際に金額が出てきているくだりから「ホルモン焼屋チエちゃん」の売上を考えてみます。
 まず17巻第7話より、チエちゃんの店がピンチの時の状況で、1日約2,500円、1週間で(チエちゃんの店は週休2日なので週5日営業)1万円強の売上減となっています。
 この状態でチエちゃんは「ガタっと売上が落ちてる」という表現を使っています。「ガタっと」という位ですから平均的売上から見ても1割かそれ以上はおちていると見るのが妥当でしょう。ということは平均的な売上自体もそんなに高額ではないものと考えられます。
 ただ、ここでは分母に来るべき平均的な売上がわからない…。うーん、金額出てくるところ他に無いかな~…あった!20巻第6話。ここでチエちゃんが売上の計算をしている。この日、あとになっても店をやってないことと、午後になって売上の計算をしているところを見ると、この日は定休日(14巻で、通常は前の日に計算をすると言っていたから)。しかも銀行が開いているから平日の定休日ですね。このことを総合して考えるに、チエちゃんは週に一度、平日の定休日に1週間の売上を計算し、銀行に預けに行くのではないでしょうか。
 この時の売上は38,640円(本文中誤植あり)。金額だけを考えても1日の売上にしては多いですし1ヶ月分は逆に少なすぎ。10日分?定休日が曜日で決まってるのにそれも無いでしょう。先程の売上の落ち込み具合から見ても、17巻と20巻の間で物価の変動がほとんど無いことを考えても、これが「チエちゃん」の1週間の売上と見てかまわないのではないでしょうか。おまけに売上の計算をしているチエちゃんの顔が曇ってもいなければ特別喜んでいるでもないことを考えると、この額が大体の平均値であることも推察されます。ということで、1週間で約38,000円、1日平均7,600円。1ヶ月だと…15万円強ですね。おお!!あの論文とピッタリ同じ。ではこれで…あれ?この後どうやって利益を出せば良いの!?…がーん!!思わぬところで挫折。
 すみません。違う方面からやり直します。

★世間の相場から迫るチエちゃんの収入
 てことで、めげずに第2ラウンド。他に資料は無いかな~。50巻。これだ!!チエちゃんがさっちゃんの家に遊びに行くお金を稼ぐためにアルバイトを探す場面(第1話)。
 ここでチエちゃんは世間のアルバイト相場(時給750~850円)を見て、自分を見失うほど動揺し「ウチ店やめてアルバイトしたいくらいやわ」と言っています。となれば、チエちゃんの実収入(時給換算)は、これよりも低いのではないでしょうか。まあ、「ウチがあれだけ頑張ってるのに、アルバイトとほとんど同じ?」というショックだったのかもしれませんから、ひとまず、チエちゃんの収入は時給換算で750円以下としておきましょう。
 さて、チエちゃんは1日何時間働いているのでしょうか? 店を開ける準備から店を閉めて後片付け、帳面等の売上整理すべてを仕事と考えると、最長で16時~22時の6時間(あくまで私見)。夕方これ以上早くてもお客さん(大部分が仕事帰りのおっちゃん)、が来ないし、夜これ以上遅いと、おバァはんの家にお風呂に入りに行く時間や睡眠時間に支障をきたします。となるとチエちゃんの日給は最高でも「750円×6時間=4,500円」。月給にして9万円強となります。チエちゃんはこの収入とアルバイト代との比較の中で自分を見失ったものと考えられます。

★「チエちゃんの収入」とは?
 ところで、アルバイトの時給を見て興奮していたチエちゃんは、店の利益のうちどこまでを自分の収入と考えているのでしょうか。
 いま一度先程の20巻第6話をみると、チエちゃんは店の売上を、銀行へ預ける分・おバァはんへ渡す分・自分のへそくり、の3つに分けています。そのうちおバァはんへ渡す分というのは単に材料費だけかとも思っていたのですが、1巻第1話を見ると、チエちゃんはおバァはんに渡す分の、半分もの額を自分のへそくりに回しています。いくらなんでも、材料費の半分をちょろまかすのには無理があります。その上、同話を参考にすると、1巻当時、材料費とおバァはんに渡すお金が分けられている節があるのです。そこで、現在おバァはんに渡す分には材料費に何かしらのお金(売上に応じて増減する)が含まれていると考えられます。
 恐らく「チエちゃん」のお店の売上げ金から材料費を差し引いた「利益分」にかかるお金です。
 ここでえらいことに気がついてしまったのかもしれないので、一旦本筋から外れます。

★税金対策-春におバァはんが寝こむのはチエちゃんのせいでは?
 チエちゃんのお店は、一見して独立採算性ですが、材料をおバァはんの店から運んでくる・チエちゃんの店で税務署に申告している人を見ない等の理由で、このお店は、おバァはんの店の支店と考えられます。この辺りの話は菊地さんの論文「税金と竹本家」にもっと詳しく書かれているのですが、ここでは少し違う論理展開をさせていただきます。
 おバァはんの店の支店となればチエちゃんは従業員です。(名目上はテツかもしれませんが切り盛りしているのはチエちゃんなのでおバァはんもそう思っているでしょうし、ここでの話にはむしろそう考えてもらった方が都合が良いのです)  チエちゃんが従業員ということは、厳密にはチエちゃんは、一旦店の売上を全額おバァはんに預け、しかる後チエちゃんに給料としてお金が支給される形態を取るはずですが、チエちゃんの店ではそうなっていません。そこで!!(以下は私の推測です)
  1. おバァはんはチエちゃんに給料を払うという形態が面倒くさいと考え、チエちゃんに支店「チエちゃん」の経営を一任している。
  2. おバァはんは材料を掛けでチエちゃんに預け、チエちゃんはその日使った分だけを材料費としておバァはんに払っている(実際には1週間分をまとめて払っている)。
  3. 支店の利益(=売上-材料費)は、全額チエちゃんの収入として扱う。ただし、それだと税務署への申告時に訳がわからなくなるので、チエちゃんが利益に応じた税金分(利益の何割か。所得税率に合わせる)をおバァはんに払うような約束をしている。
  4. おバァはんはチエちゃんから渡された税金分のお金からチエちゃんのお店の利益を計算している(若しくは、チエちゃんがお金を渡す時に「今週は儲けがこれだけで、おバァはんに渡す分がこれだけ」というようなことを伝えていた)。この金額をもとに税務署への申告書を作成している。
 つまり、この材料費と税金分の合計が、チエちゃんが「おバァはんに払うお金」なのでしょう。そしてチエちゃんが「半分もろとこ」と言っているのはその内の税金分から、と考えた方が無難です。そうでも考えないとへそくり分があまりにも莫大な金額になってしまうからです。
 恐らくチエちゃんが店を経営するようになってから、おバァはんが「この店はチエの好きなようにやりなはれ。ただ、もうけの○割はわたいに払うんでっせ」(大阪弁知らないので、変になっていたら失礼)というようなことを言われ、そのお金にどういう意味があるのかを詮索することもなく、おバァはんにに払うようになったのでしょう。そして、おバァはんとしても、いくら大人顔負けとはいえ小学生のチエちゃんに、「そのお金は税金分なんだ」という難しい話をしなかったのだと推測します(事実チエちゃんは、税金の事については無頓着で、せいぜいおバァはんが寝こむ時期ぐらいにしか考えていません)。
 このような経緯から、チエちゃんにとって、そのお金は重要な意味を持つお金、という感覚がなく、いつからか、そのお金の半分を自らのへそくりとしてもらうようになります。ただ、このことをおバァはんが気がつかない訳がありません。税金分としてチエちゃんから払われる金額から計算した売上高と、材料費(=ホルモン等消費量)から予想される売上高が合わないのですから。
 しかし、チエちゃんの家庭環境を考えると少しの貯蓄は必要だと考えたのか、はたまたいまさら事情を言って厳しく取り立てるのをためらったのか、どちらにせよおバァはんはこの件について無視を決め込むことにしたと考えられます。
 かといって、チエちゃんの店以上に経営が厳しいであろうおバァはんの店から、チエちゃんのちょろまかした税金分(後の計算に寄りますが年間で約4~8万円)を立て替える余裕はこちらにも無い。となれば、チエちゃんのお店の営業利益を半分と偽って税務署に申告しつづけているのではないでしょうか。だとすれば…
 驚愕の事実!おバァはんが申告後に寝こんでうなされるのは実はチエちゃんのせいだった?
★総収入結果発表
 ここで、話を本筋に戻します。売上のうちで、おバァはんに渡したお金以外の2つ。銀行分とへそくり分。これが竹本家の収入とみて間違いないでしょう。しかし、それがイコールチエちゃんの収入となるかというと話は別です。チエちゃんにとって収入とは自分が自由に使える物だけを指しているのか、それともお店「チエちゃん」での収入全体を指しているのか。つまり、へそくりだけを指すのか、へそくり+銀行分を指すのか…。
 もし、へそくりだけを指しているのだとすれば、チエちゃんは毎月最高で9万円からのお金をチエちゃん個人の口座に貯め込んでいることになります。しかし、チエちゃんが「お母はん、ウチが店やってるの趣味と思ってるんやないやろか」(17巻第7話)と言っていたり、総売上が15万円でしかないことや、さっちゃんの家に行く資金を貯める為に、他にアルバイトをしようとするところから考えて、そこまで自分のへそくりに回しているとは考えにくいし考えたくありません。
 となると、チエちゃんにとってアルバイト代の相場と比較していた自分の収入とは、銀行分+へそくり分、つまり竹本家全体の収入を捉えていた、と考えられます。チエちゃんが「…アルバイトしたいくらい…」といったのは決して自分のへそくりの為ではなく、竹本家の家計全体を考えた上での発言なのです!!…チエちゃんなら当たり前か。
 結果、竹本家の1ヶ月の平均収入は最大でも約9万円。アルバイト募集の張り紙を見たチエちゃんの、あの驚きようだとそこまでも行ってない。あくまで推測の域を出ませんが6~8万円が良いところではないでしょうか。最後のまとめでの計算を簡単にする為に、ここでは間を取って7万円とします。
 最終的に話を整理して1ヶ月単位で収入等をみますと…
 まず、お店「チエちゃん」の1ヶ月の売上は15万円。次に、その中で竹本家の収入、つまり店舗「チエちゃん」の営業利益が7万円。そしてチエちゃんのへそくりですが、仮に営業利益が7万円となっていますので、本・支店の全収入を330万円以下とした場合、所得税率は10%、330~900万円としても税率は20%なので前者の場合、チエちゃんが本来おバァはんに支払うべきお金は7,000円。ということでへそくりは3,500円、同様にして後者を採用した場合はへそくりは7,000円、ということになります。そして、おバァはんへ支払われるお金の総額(材料費+税金分)は8万円。へそくりを差し引いた竹本家としての収入は6万6,500円(課税率10%の場合)、若しくは6万3,000円(課税率20%の場合)、となります。おバァはんの店の状況から考えて前者の可能性が高いと(勝手に)判断し、次のように決定します。
  1. 竹本家の月収(チエちゃんの稼ぎ):70,000円
  2. 内へそくり分:3,500円
  3. 竹本家月生活費:63,500円(※ヨシ江さん家出時)
 と、ここまで読んでいただいた方で「あれっ?。売上計算に使った資料(20巻)は1984年のもの、一方アルバイトの張り紙ネタ(50巻)は1992年のもの。その間の物価変動は修正しないの?」と疑問をお持ちの方、いるかと思います。確かに売上は変わっているかもしれません。ただ、月収とへそくりの額は92年の資料から算出した物なので、現在とそう変わりが無いものと思われます。この論文は、ヨシ江さん家出当時のチエちゃんの生活状況を現在の貨幣価値で判断してみよう、という考えで書き始めましたので、修正なしでも結論自体に問題無いかな、と考えまして修正を施しませんでした。(などともっともらしいことを言いつつ、事実は闇の中へ…)
 でも、少しだけ罪悪感が残るので、次の資料を提出しておきます。以下は大卒男子の初任給の推移です(労働省:「賃金構造基本統計調査」より)。これより、ヨシ江さんの家で当時(1979年)のチエちゃんの収入を皆様で推理してみてください。(←なんて無責任な!!…ごめんなさい)

 1984年:13万6千円
 1992年:18万7千円
 1999年:19万7千円

※なお、ここでは費用に材料費以外の物を考えませんでした。光熱費等は1週間単位で払える性格の物ではないので、勝手な想像で、それらのお金は銀行に預けているお金から払っていて、申告の時は2つの店一括で費用を計上しているのではないかと考えたからです(もし自動引き落としなら、証拠として通帳に全部記載されていますし)。そして、多少の誤差は年度末に修正しているものとして考えました。

 生活費が1ヶ月大体7万円弱…ヨシ江さんが家出中の時でも、家が持ち家だし、生活も不可能じゃない?…でも楽ではないですよ…ね?


★おまけ「竹本家はヨシ江さんの収入のみで本当に生活できるのか」
 ヨシ江さんは、洋裁の職についたときチエちゃんに店をやめるように勧めますが、チエちゃんはその後も店をやめようとはしません。趣味でやっているわけでもないようです。では、本当にヨシ江さんの収入のみで竹本家はやっていけるのでしょうか?
  1. やってはいけない(ヨシ江さんの勘違い)
  2. バッチリやっていける(チエちゃんは強迫観念で店をやっているか、ヨシ江さんの収入を把握できずに過小評価している)
  3. 厳しいけどやっていける(家計に余裕を持たせるためチエちゃんも店をやめない)
 …きちんとした根拠は出せないのですが、3に近い2という所でしょうか。皆さんはどう思われますか?

論文目次総合目次堅気屋倶楽部